土佐山診療所での家庭医療実習 (7月7日・21日)
柿沼早紀
今回の実習で学んだことは、家庭医療とはどういうものかということと、将来の自分の進路についてと、アメリカと日本の医療の違いについてと、来院した患者さんの病気についてだ。
まず、家庭医療について、私はこれまで訪問診療することが家庭医療だと思っていました。また実際の家庭医療の内容は、総合診療科がやっていることだと思っていた。しかし総合診療科では小児や婦人の診療はしておらず、海外で言うところのGeneral Medicineとは異なることが分かった。家庭医療とは、例えていうと手術意外の範囲の診察で、理想としてはそれぞれの科の外来のレベルと同等程度のレベルで行うことを目標とし、さらに、”家庭医療”というように家族間の関係性を含めて治療を決めていくものであり、海外では総合診療は家庭医療とほぼ同じ意味でつかわれるということも分かった。実際に見学してみて、風邪のような症状から神経症の人まで、また様々な年齢の男女が診察を受けに来たことに驚いた。そして、一人一人の訴えを時間をかけて聴き、丁寧に診察して信頼関係を作っているという印象を持った。今まで、身近な総合内科の医師を見てきたが、患者数の多い診療所だったこともあり土佐山診療所のようには丁寧に診れておらず、態度も横柄なので評判が悪かった。しかし、実際に佐野教授の会話術を目の当たりにすると、患者としっかりコミュニケーションをとって、情報収集をすることがいかに大切かということがわかった。患者は自分から症状をうまく表現できなかったり、良くない生活習慣を持っていたりすることもあるので、医師が知りたい情報を的確に、うまく引き出す必要があると思った。そうした能力は、さまざまな医師の診察の様子を観察しながら、自分なりにうまい言い方を考えるなどして身に着けていくものであることがわかった。これから、家庭医療にとどまらず、さまざまな科の医師の働く姿を見て、自分の目指す医師像やコミュニケーションスタイルを明確にしたい。そして、さまざまな診察風景を見る中で、症状から考えられるよくある疾患・原因の上位5つと見逃してはいけない危険な疾患2つを思い浮かべながら診療すること、患者さんの社会背景を考えて医療をすることを目指したい。
次に将来の進路について、自分は最近、早く自分の進むかを明確にしたほうがいいのではないかと思い少し焦る気持ちがあった。しかし、阿波谷先生のお話から、科を選ぶことばかりに気を取られるのではなく、自分がどのような医療がしたいかということに注意を向けていくほうが大切だと感じた。今までの私は、初対面の人とコミュニケーションをとることに対して自信がなく、外科で特定の臓器を専門として治す道が自分には良いのではないかと思っていたが、そういった観点だけでなく、自分の目指す医療に合わせて自分を変えていく必要があることも感じた。これから、将来的にリーダーシップをとる立場になるかどうかにかかわらず、先頭に立って他の人をまとめていく機会を増やし、コミュニケーション力を磨いていきたいと思った。そして、日々医学を学ぶ中で、自分の目指す医療を考え続けたいと思った。
次は、アメリカと日本の医療の違いについてだ。アメリカと日本では医学教育がまず大きく異なっており、日本は大学が研究の場であるという考え方が強いのに対し、アメリカでは大学は教育の場であり、臨床で役立つ技術を教える場であるから、アメリカの学生は診断力がある。また、投薬や予防注射についても違いがあり、日本では少量多剤の傾向があり、薬の効きが悪いと他の薬を少量加えていく。しかしアメリカでは、まず一種類の薬を処方し、それが効果なければだんだんと量を増やしてしていく。少量多剤は、医療費増大や、患者の負担増大につながるが、日本で特殊に行われている慣例的なことの一つだということが分かった。診療時間についてもアメリカと日本で違いがあり、年間でアメリカでは40分×3回同じ医師が継続的に相談を受けるところを、日本では10分×12回異なる医師が相談を受けることになることが多いということがを知った。日本では、そうすることで頻回に患者情報の蓄積をしてスムーズに診察できるようにしている面もあるいうことも分かった。アメリカと日本の違いということとは離れるが、医学界では日本語の論文よりも英語の論文のほうが圧倒的に多く、論文検索は英語で行ったほうが多くの情報を得られるということも今更ながら納得。英語の論文を読むためにも早く医学英語の力を身につけなければいけないと思った。また、アメリカと日本の医療の違いを知るためにも、海外の医学生と友達になってみたいと思ったので、これからはより、使える英語力を身に着けることに力を入れたい。
最後に来院した患者さんの病気についてだ。ほとんどの高齢者の方が高血圧、糖尿病を患っており、食事や生活指導を受けていた。その際、ただ単に「気を付けてください」というだけでは患者に伝わらないので、具体的にどのくらいの摂取カロリーにすればよいのか、どのくらい心拍数が上がる運動をすればよいのかというところにまで指示をしてあげることが大切だということが分かった。また、日々の運動量を考えたうえで、体重を基にして計算した量が必要なカロリー量であり、野菜が質量に対してカロリーの低い食べ物だということを知らない人がいるので教えてあげることも大切だとわかった。軽い難聴の人に対して、鼓膜や中耳に問題がなければ、聴神経や脳に問題があり、脳血流量が低下していることが原因かもしれず、その場合動脈硬化を改善することが予防になるということが分かった。聴力を図る際、指を耳元ですり合わせて聞こえれば、30~50デシベルの音が聞こえるということだということが分かった。糖尿病について、ただ血糖値が下がればいいというわけではなく、特に95歳を超える人の場合、8~8.5くらいであればそのままでよく、QOLを維持することが優先だということが分かった。不眠に対し、抗ヒスタミンを処方すると、依存性が低いということも分かった。入院して肩が上がらない人に対して、週に1回のリハビリ通院だけでは効果が薄いので、家で自分でできるようなトレーニングを教えてあげることが大切だとわかった。筋肉を動かさなかったことで固まってしまっている人は、まず筋肉をほぐすところから始めることが大切だということも分かった。予防注射では微熱があっても注射ができるが、アレルギー、AIDS、免疫の下がる重篤疾患があるとできないということが分かった。爪の白癬菌の治療について、塗り薬が深部まで届く確率は低いので、飲み薬を飲むことを3か月以上続けて爪が生え変わることを待つことが効果的だとわかった。陥入爪の処置は角が直角になるようにするより、完全に角を丸く爪を細くすることがよいということも分かった。糖尿病治療薬で、世界で主に使われているのはメトグルコだが、日本では使用の優先度が3,4番であるということを知った。膵炎の薬の中にも日本では一般的に使っていても、実際にはエビデンスがないものもあった。高血圧・高コレステロールの治療についても、ただ下げればいいというものではなく、心筋梗塞や脳梗塞の死亡率を最小限にすることを最終目標するべきだということが分かった。ぜんそくの人の呼気を聴診器で聞くと、プープー、ヒューヒューといった音がすることを知った。肩峰下注射の際、無菌状態のところに注射をするので消毒を念入りに行う必要があることが分かった。子供が脱水状態の時、口から飲んだり、点滴もできないような場合は、現在は骨髄に生理食塩水を注射することも知った。その際、体重からどんな速度でどのくらいNaやKを入れる必要があるか計算するとわかった。プール熱のように、よくある疾患でも教科書に載っていないものがあるので、自分で本を読んだり外来をみるなかで知る必要があるということも分かった。神経症の方に対しては、時には簡単な検査をしてあげることで安心感を持ってもらうことも大切だということが分かった。
進路のことから診察の方法まで、色々なことを考える機会になり、これからやるべきことが以前よりも明確になった。1年生のうちに時間を有効に使い、できるだけ色々な場所でいろいろな経験をしてみたいとも思った。そして、あまり先を見すぎずに、着実に勉強する大切さも分かった。
今回お世話になった先生方、看護士や事務の方に対し、お礼を申し上げます。大変お世話になりました。また研修に行かせていただく機会があれば、よろしくお願いいたします。
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