スキップしてメイン コンテンツに移動

1年生西村萌花さんが実習に来てくれました

8月13日に、医学科1年生の西村萌花さんが実習に来てくれました。

まだ、医学的なことは十分わからないでしょうから、患者さんの生活を想像すること、患者さんと診療所の関係を見てもらうことを目標にしました。

ある患者さんの帰りのデマンドタクシー(公共交通かわせみ号)に同乗させていただき、ご自宅の様子まで見に行ってもらいました。

沢山のことを学んでくれたようで嬉しく思います。

----------------------------------------------------------------------------------------

「土佐山診療所の実習を通じて学んだこと」   

                                    医学科1年  西村萌花

私は今回の実習で以下のことを学ぶことができた。

1つ目は患者の生活を配慮した治療の必要性である。

家庭医療においては、患者の家族、食生活、家の場所などの生活面を総合的に判断した上で、治療方針の決定を行う必要があることがわかった。例えば、家が山のほうにある年配の方に運動をするよう指摘しても、急な坂道しか周りにない場合、運動することで逆に怪我をしてしまう恐れもある。また、糖尿病の治療のため、患者に「糖分をやめる」といった大雑把な指示をするだけでは、生活の質を下げてしまうかもしれない。この場合は糖分の多いジュースやゼリーをやめたり、ゼリーの代わりに寒天を勧めたりするなど、患者の食生活に合わせた提案をしなければならないだろう。

家の立地や食生活、仕事、趣味など、患者の日常的な話に耳を傾けることによって、日頃の暮らしや地域の様子を知り、情報を集めることができる。これは、患者の生活が見えにくく、患者1人当たりへの診察時間が短い大学病院などの大きな病院に比べ、患者の生活が強く影響し、1人当たりの診療時間も多めにある診療所でしかできないことである。つまり、診療所では特に、患者の病を治すこと以上に患者と家族の意思を最大限に尊重した上で暮らしをより良くすることに焦点を置いた医療が必要である。また、患者によって性格も大きく異なるため、医師は話し方や検査を促すタイミングも見計らう力も必要であり、さらに、患者との会話において医療の知識以外にも、さまざまな方面の知識がある方がいいと考えた。


2つ目は、患者の社会的な繋がりを気にかけることの必要性である。

阪神淡路大震災では、仮設住宅によって住み慣れた地域でのつながりを失った人々が多かかったために、対人関係が遮断され、孤独死や引きこもりが多く引き起こされたことが問題視された。このように、社会的なつながりを切り離されてしまうと人は精神的に追い込まれてしまう。そしてこれは、大規模な災害後に限らず、日常的にも問題視すべき事柄である。そのため、例えばいきいき100歳体操やお祭り行事などを通じて人と話す機会を増やし、社会的なつながりを増やしてみることを重視する必要がある。そして、診療所は看護師や医療事務の方々など、人的資源も大きな病院に比べたら少ないが、その分患者と関わる機会も多くなる。医師は患者の暮らしや症状を詳しく知っているため、どの病院が適切かを患者の交通面などに配慮しながら判断でき、診療所とは医療を提供するだけでなく、他の病院との架け橋の役割を果たすと考えていたが、さらに患者さんの社会的なつながりを担う役割もあるのではないかとも思った。  

そのほかにも、患者に治療を説明する際には難しい専門用語をあまり使用せず、わかりやすい言葉に言い換えながら患者や家族が理解しやすいように配慮しなければならないこと、救急で訪れた患者さんにも、市内の大きな病院に搬送する必要があるのかを見極め、それに応じた治療を施さなければならず、マルチに対応できる技術が必要不可欠であること、薬の飲み忘れを正確に聞き出すために、薬を飲み忘れていないかをストレートに患者さんに尋ねるのではなく、どれくらい余っているかを訪ねてみるといったことも知ることができた。さらに、限られた人的資源から病院を運営していくため、医師、看護師、医療事務の方々1人1人の役割が多くなるが、土佐山診療所ではそういった忙しさがある一方でゆったりとした雰囲気も感じられ、診療所という空間に対し患者が不安を抱かないような配慮もされているような気がした。

以上のことから、患者、家族の意思を尊重し、病気を治すことだけを考えるのではなく、患者の暮らしに必要なことは何かを感じ取る力、そして、その情報収集には欠かせない日常の会話、患者の社会とのつながりがなくならないような生活の支え、看護師やスタッフ、地域住民との信頼関係の築きといったことが今回の実習から私が学んだ、高知県の医療現場に貢献するにおいて重要なことである。心音や心電図の様子、血沈の検査や禁煙治療など、医学生として必ず将来は知っておかなければならないことも多く教わったが、医学的な知識はまだ全くない状態のため、特に今回は患者の精神的な支えに注目した。将来医師として働くときには今回の土佐山診療所から学んだ多くのことを活かし、病気だけではなく患者自身を診ることを忘れないでいたいと思う。

最後に、お世話になった診療所の方々、患者さん方にお礼申し上げます。このたびは大変貴重な経験をさせていただき誠にありがとうございました。医学的な知識以外に医師にとって必要なことを学ぶことができ、大変有意義な日となりました。また実習に参加させていただく機会がありましたらよろしくお願いいたします。

----------------------------------------------------------------------------------------

コメント

このブログの人気の投稿

高知の方言調査!!

4月に入りました。 雨が降ったり、寒くなったりと天候が優れません。 みなさんの体調はいかがでしょうか。 さて以前に医学科3年生が臨床現場での土佐弁の研究で訪問しておりました。 (記事: http://blogs.yahoo.co.jp/tosayamaclinic/38636193.html ) 現在は臨床現場でより使われる土佐弁リストを作成中のようです。 先日、現在作成中のリスト、またリストにない土佐弁についてみなさんの意見を集めたい、との趣旨でポスターを持参して訪問してくれてました。 ポスターについてコメントを募集中しておりますので、どしどしお寄せ下さいませ。 (森尾)

高知大学医学部へき地医療実習(11月)

10/31-11/1に高知大学医学科5年生のへき地医療実習で、臼井真菜さんと廣辻敬士君が土佐山に来られました。2週間で県内の市中とへき地の医療機関、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、保健所で実習を受け、大学附属病院の外でどのような医療、介護、福祉が実践されているのかを学習します。郡部では高齢化が進んでいること、診療所には高度な医療設備はないが、BPSモデル、地域志向の医療などを活用した医療について講義し、具体的にどうするのかを実際の診療で説明しました。また、患者さんのお宅にも保健師さんと訪問してもらい、生活背景の重要さを実感してもらいました。今後、どのような分野に進もうとも、患者さんを理解するように努力する医師になってほしいと思います。臼井真菜さん、廣辻敬士君、頑張ってね!

7月のへき医療実習その2

7/23-24に高知大学医学部5年生の星俊一郎君と松田愛理さんが当院でへき地医療実習を受けられました。2日間で地域医療を理解することは難しいと思いますが、外来診療、ケアマネジャーとの利用者宅訪問などを通して、人口約950人の地区唯一の医療機関でおこなわれている仕事に触れてもらいました。医療に関することはどんなことでも当院が窓口になっており、ふだん大学附属病院で実習を受けている2人にとって新たな発見がたくさんあったようです。星君、松田さんともにとても真面目に取り組んでもらえて、成長した姿が楽しみです。星君、松田さん、残りの学生生活を有意義なものにしてくださいね。(松下)