9月25日(金)に2年生の川添達也君が実習に来てくれていました。
実習を始めるにあたり、一緒に学習目標を考えました。「どんな医師になりたい?」という入試面接のような感じで話をしていくと、「患者さんに寄り添う」という言葉がでてきました。「患者さんに寄り添う」ってどういうことなんだろう? 言葉は美しいんだけど、具体的にこれをしたら「寄り添っている」と言うものがあるわけじゃないよね。患者さんとの間で発生したことに対して、どのように対処するか、言葉をかけるか、具体的な行動一つ一つの背後にある考え方、倫理観のようなことが、ぼんやりと「寄り添い」ということなんだろうと思います。
一日、一緒に過ごしてみて、言葉や態度から、「寄り添う」ことを一緒に考えてみることにしました。
感想文を読むと、私が思う以上に、しっかり受け止めてくれていたようです。豊かな感性を持っていることがうかがえて、とても嬉しく思います。また、いつでも学びに来てください。(阿波谷)
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地域医療実習を終えて
高知大学医学部医学科2年 川添達也
今回初めて土佐山診療所に行かせていただいて、様々な面で多くのことを学ぶことができました。まず今回の実習の目標は、「患者さんに寄り添う」とは具体的にどういう事をすればよいのかを考えることでした。そのため、阿波谷先生の診察を見学させていただきながら、先生がどんなことを話しているのか、どんな表情で患者さんと接しているのかを特に意識して見ていました。そして僕が診察を見ていて、気づいた点は4つあります。1つ目は患者さんの病気の状態だけでなく、少しプライベートな話にも耳を傾けていたことです。患者さんの世帯状況や経済的状況まで把握しており、経済的に薬や診察の代金を払うことができるのかということを考えたり、同じ成分の薬でも値段が異なることから、薬の値段を加味してできるだけ安価な薬を処方するようにしていたりというような対応を行っていました。また、家族間の問題についても考えなければならないとおっしゃっていました。
2つ目は、患者さんには気づかれないようにいろいろなチェックをしていたことです。診察の前に体重を測ってもらい、体重の増減から、きちんとご飯を食べられているか、病気によって体重が増えたり減ったりしていないかなどをチェックしていました。また、日常生活の話を聞きつつ、些細な変化を感じ取って、心不全のチェックもしていました。
3つ目は、患者さんに対して真っ向からすべて否定することは一切なかったということです。医学的にはこの病気を治すためにはこの治療を行わなければならないが、患者さんが拒否すればその治療法は行わないとおっしゃっていたけれど、やはり手術をうけたほうがいい患者さんには、切るのが嫌なら切らないで治すことのできる手術もあるよと新しい選択肢を提示し、さりげなくお勧めしていました。また、病気の状況から、お酒やたばこは控えるべきである患者さんや、つえをつくようにするほうが良い患者さんに対して、「同じような状況の患者さんで、よくない事になった人もいるからね~。」というように「これをしないとダメ」と強制するのではなく、患者さん自身がだめだなと気づけるようにアドバイスするようにしていました。
4つ目は、患者さんを安心させる言葉遣いをしていたことです。血圧測定や治療の後に「バッチリ!」、「上等!」といった分かりやすく患者さんを安心させることばをかけていました。患者さんによっても声のトーンを変えたり、声色を変えたりしており、そういったさりげない心遣いは患者さんだけでなく、様々な人との関係を築くうえで大切にしていくべきところだなと感じました。また、いろいろな患者さんが「阿波谷先生が優しく話をしてくれて元気が出た。」と言っていて、自分が理想としている患者さんとの関係を築けていたし、医師と患者さんという関係の心の距離ではなく、もっと近い関係の距離間で患者さんと接することができているなと思いました。
以上のように、病気のことだけでなく、病気の背景にある患者さんの状態を把握することの大切さや医学的な正しさとその患者さんの人生における正しさとは異なることを学ぶことができました。さらに、土佐山診療所には地元の方々が急遽診察してもらいたいと来ることもあるし、往診に行くこともありました。阿波谷先生は「この診療所は輸血したり、入院したりすることはできないけれど、ここに来たら何かしてくれると思ってもらえることが大切。」とおっしゃっていて、その通り地元の方々はこの診療所のことを頼りにしていると感じることのできる実習になったと思います。「患者さんに寄り添うとは何か」ということが土佐山診療所へ行って少しわかったような気がします。これからの実習でも見つけていきたいと思えたし、自分の理想とする医師像に一歩近づいた実習にすることができました。
最後に、このような実習をする機会を与えてくださった高知県医療政策課の方々、家庭医療学講座の方々、また、お世話になった阿波谷先生ならびに土佐山診療所の職員の方々、本当にありがとうございました。
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