土佐山へき地診療所実習(8/17,18)
村田 勇斗
高知市内から山と川に挟まれた道を北に進んだところにある土佐山は、私が生まれ育った町に比べると人も建物も非常に少ない、まさしくへき地であった。診療所での対応が困難で緊急性の要する患者が出た場合、救急車を呼ぶと時間がかかり過ぎてしまうため、患者の家族に山の麓まで連れて行ってもらうほどである。時にはドクターヘリを要請するという話を聴いたときには驚いたものだ。地域の特色上患者のほとんどが高齢者であり、認知症の疑いがある患者も多く、主に高血圧や糖尿病、ひざなどの関節痛により診療所に通っている。私が実習に行ったのは丁度お盆の時期であったため、患者が少なく、些細な事も含めて患者の気になることを聴き、ゆっくり丁寧に対応することができた診察であった。
私は診察で、大学の授業で受けた患者とのコミュニケーション以外にも、新たに多くのものを得ることができた。聴診器を通して心音を聴いたり、肺の大きさを測る打診や手術による縫合の処置を見たり、初めて経験することばかりであった。他にも、脳の萎縮する部位の順番やその部位が司る機能を知った上で、認知症の進行度を診断する具体的な方法など、ごく一部ではあるが、症状の出るメカニズムを知ることで理屈的に判断する術を学び、多岐にわたる濃密な時間となった。その診察の中でも印象に残ったのが、患者の服用している薬の異常な量である。様々な病院で高血圧や糖尿病などに対する医薬品を処方してもらっている高齢者は少なくなく、10種類を超える薬を毎日飲んでいる患者までいた。金銭的負担に加えて副作用による身体的負担も重く、かかりつけの診療所や家庭医が患者の服用している薬を把握する必要があるという、実際に医療現場に立つことで見えてくるものもあった。
実習の2日目には、とある糖尿病患者の家に往診する貴重な機会に巡り合うことができた。入院したくないという患者の思いや、早く治ってほしいという家族の思いに触れるとともに、両者の思いを汲み取った先生の対応を近くで学ぶことができた。入院しないで血糖値を抑えるために、家族に器具の使い方を教えてインスリン注射をしてもらう方向で進め、患者が食べているものを実際に見せてもらい、食事を担当している人に食材を見せながら料理を提案するという往診だからこそできる手段で、具体的かつわかりやすい生活指導としていた。血糖値やコレステロール値を見て、異常な数値であれば治療するということは大切だが、長期的にみると生活の改善が必須であることを改めて実感した瞬間でもあった。また、生活指導をするためには、患者の1日の適切なカロリー摂取量を計算し、食べ物のカロリーをある程度知っておくことが絶対条件であると気づかされ、食べ物のカロリーを意識して生活し始めたところである。
どの診察も、最初は「でも先生…」と、患者やその家族は不安が絶えない様子であったのが、最後には「先生に相談して良かった!」となっていた。患者自身の症状だけでなく知り合いの症状も相談されることがあり、時間の許す限り相談に乗ることで患者の不安が消えていくのが目に見え、実習を通して、将来医師として働く意識や自覚が強まった。土佐山へき地診療所のみなさん、2日間ありが
とうございました。
コメント
コメントを投稿