先月、実習に来てくれていた3年生の井上希さんのレポートが届きました。
地域の人々にとって、医療は生活の一部であり、それを担う診療所の役割についても理解してくれているようで、嬉しく思います。
また、実習においでください。(阿波谷)
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土佐山診療所での実習
医学科3年 井上希
11月10日、12日に土佐山診療所で実習をさせていただきました。大学に入学してからいろいろな実習に参加させてもらいましたが、診療所での実習は初めてだったのでたくさんの発見もあり新鮮でした。
今回の実習で印象に残っているのは「人は見たことがないものを想像することが出来ない」という阿波谷先生のお言葉です。この言葉を今回の実習の中で聞いたからこそ自分の中にすとんと理解することが出来たのだと思います。例えば、特殊な経済環境や家庭環境にいる人達の存在を知ってはいても現実にどのような暮らしをしているかはわかりませんし、人それぞれで違います。このようなことだけでなく大学の講義などをきいて知識としては知っていることでも経験・体験(実際にみる、きく)していないとわからないことはたくさんあります。だから少しずつ知らなかったことを知るのが大切なんだと思いました。
先生の患者さんに対する接し方に工夫がありました。具体的には「お薬残ってますか?」ではなく「お薬どれぐらい残ってます?」と残っていることが前提で聞くことで患者さんの答えにくさを緩和したり、頑張っていることを評価してその頑張りを続けてもらったりすることです。言い回しの変化で患者さんから得られる情報の正確性が上がるということに気づけましたし、医療の知識や技術を提供するだけでなく、患者さんのやる気を引き出すことも大切な役割なのだと感じました。
実習全体を通して診療所は和やかな雰囲気に包まれていました。阿波谷先生だけでなく看護師さんや事務員さん診療所で働くすべての人がその雰囲気づくりに貢献しているのだと思いました。また、患者さんが私の方を向いて雑談の相槌を求めたり、笑いかけてくれたりするようなことは大学の附属病院などでの実習ではない経験でした。土佐山の人たちの人柄もあるのかもしれませんが、阿波谷先生が連れてきた生徒なら安心だというような信頼があるように感じました。患者さんのお父さんのことも知っている、お子さんはもちろんお孫さんのことも知っている。そんな先生や看護師さんに会って近況を話してほっとしたような顔で次の診察の予約をして帰っていく。それは土佐山の人たちの生活の一部になっているんだと思いました。医療は生活の一部だということを今回の実習で身をもって感じることが出来ました。
今回の実習で座学では学ぶことのできない部分をたくさん知ることができたと同時に自分の知識・技術の不確かさを自覚しました。3年生になってから学んでいる診療技術などもそうなのですが、2年生で学んだ解剖学や生理学の知識も定期的に触れていないと忘れていることに気づきました。これから学んでいくこともこれまでに学んだこともしっかり定着させて自分のものにしていきたいです。自分はまだまだ未熟でできないことや知らないことがたくさんありますが、一歩ずつできることから知れることから始めようと思います。
最後になりましたがこのような状況の中で実習の予定を調整してくださった家庭医療学講座の皆様、快く実習を受け入れてくださった土佐山診療所の皆様、診察や処置の見学を承諾してくださった土佐山住民の皆様に心より感謝申し上げます。また、いつか実習に行きたいと思っているのでそのときはよろしくお願いいたします。
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